スピッツベルゲン
長い年月をかけて圧縮された氷は透明度が大変高く、青色は光の加減で表情を変えます。この独特の色はグレイシャー・ブルーと呼ばれます。

なぜ氷河と呼ばれるのでしょう

氷河は英語・フランス語共にGlacier、ドイツ語でGletscher。フランス語のGlace(氷)が語源とされています。
日本語訳は明治時代に日本の地質学者が「氷河」と呼んだのが始まりだそうです。

ヴァトナヨートクル

アイスランドのヴァトナヨートクル(ヨートクルは氷河の意)を例にしてみます。

ヨーロッパ最大のヴァトナ氷河は、広範囲になだらかな山を覆う「アイスキャップ」と呼ばれる氷河です。
地上で人間の目に触れるのは、左写真の「アウトレットグレイシャー」部分のみ。 ヴァトナ氷河のアウトレットグレイシャー部分が、和訳の「氷河」に該当する部分です。

ゴルナーグラート

スイスのバレーグレイシャー。
実際に訳者がイメージしたと思われるのはヨーロッパアルプスに多い「バレーグレイシャー」だと考えられます。山頂付近から流れ出す様子はまさに「河」です。

氷河の種類

氷河はその大きさや形状などにより幾つかの種類があり、それぞれ名称があります。
大陸を成すほど巨大なアイスシート、山全体を覆うアイスキャップ、広大な氷原を成すアイスフィールド、そしてマウンテン(アルパイン)グレイシャーバレーグレイシャーと呼ばれる比較的小規模なもの。 それぞれのタイプの氷河の末端から派生するのがアウトレットグレイシャーです。

アイスシート
アイスシート

大陸を成すほどの巨大な氷河で、世界で南極とグリーンランドにだけ存在します。
グリーンランドの80%を占めるアイスシート。まさに氷の砂漠です。

ラッセル氷河 グリーンランドのラッセル氷河
アイスシートから派生したアウトレットグレイシャー例。巨大な氷の壁を形成し、非常に美しい色合いです。
*見られる場所とシーズン:グリーンランドのカンゲルルススアークから日帰りツアーが年間を通じてあります。

イルリサットの氷山
アイスストリーム

アイスシートの 一部で、特に早いスピードで動いている氷河を言います。

イルリサット(グリーンランド)のヤコブスハブン氷河は北半球で最も動きが早く、 イルリサット付近で崩落し大量の氷山を生み出します(イルリサット・アイスフィヨルド)。

ディスコベイ イルリサットのディスコ湾。
氷山はディスコ湾へ流れ込み、一部は南下してカナダのニューファンドランド島沖へと旅します。
*シーズン:ベストは夏季。

ヴァトナ氷河
アイスキャップ

キャップ(縁なし帽)のように山に被さる氷河。急峻な山ではなく、なだらかに広がる山でないとこうはなりません。

アイスランドのヴァトナ氷河中腹。万年雪で覆われた山と一体化しており、一般的な氷河のイメージとは異なるかも。

ヴァトナ氷河 スカフタフェットル氷河
ヨーロッパ最大のヴァトナ氷河には30ものアウトレットグレイシャーがあり、 国道を沿いや近郊の町からも複数望めます。
*見られる場所とシーズン:アイスランド。アイスキャップはスーパージープで年間を通じて観光可能。 アウトレットグレイシャーは夏季、東部へのツアーでご覧頂けます。

アサバスカ氷河
アイスフィールド

山に被るアイスキャップとは異なり、名前の通り平原を形成している氷河を言います。

カナダのコロンビア・アイスフィールドの末端。地上から見えるのはアウトレットグレイシャーのみです。

アサバスカ氷河 アサバスカ氷河
世界で最も行きやすく安全に氷河の上に降り立てます。
*見られる場所とシーズン:カナディアンロッキーの日帰りツアー(4-10月)。

ヨステダール氷河
マウンテン(アルパイン)グレイシャー

大陸氷河とも呼ばれる巨大なアイスシート(南極・グリーンランドのみ)以外の氷河の総称、或いは個別の氷河を単にマウンテン・グレイシャーと呼ぶ場合もあるようです。

大陸ヨーロッパ最大のヨステダール氷河(ノルウェー)

ブリクスダール氷河 ブリクスダール氷河
ここ10年で激しく後退しています。

スイスアルプス
バレー・グレイシャー

山の谷間にある氷河。元は山頂付近の窪み等にあった氷河(アルパイン・グレイシャー)が谷へ流出したものです。

アルプスやカナディアンロッキーなどにも多数。 比較的小規模なものが多いため温暖化による後退、消滅が著しい。

ゴルナーグラート ゴルナーグラート展望台付近。
*見られる場所とシーズン:スイスアルプス、カナディアンロッキー等。

氷河クルーズ
タイドウォーター・グレイシャー

バレー・グレイシャーのうち、末端が海や湖、川に達している氷河を言います。

アラスカのコロンビア大氷河からは多数のアウトレットグレイシャーが海に注ぎ込みます。

氷河クルーズ 氷河クルーズ
カービングと呼ばれる崩落が起こり、氷河が海へと砕け散ります。
*見られる場所とシーズン:アンカレッジ発日帰り氷河クルーズ(主に5-9月、秋冬も有)


世界の氷河(北半球)

どんな氷河がどのようにして見られるのかをまとめてみました。

カナダ国旗 カナダ

雪上車で登り、氷河に降り立てる
カナディアンロッキーのアサバスカ氷河雪上車観光は夏のロッキー観光を代表する人気アトラクション。美しいハイウエイのドライブを経て、特殊な車両で氷河を登って行くのが特徴です。時期は4-10月。また極北のユーコンでは飛行観光でカナダ最高峰マウントローガン等の壮大な氷河がご覧頂けます。

スイス国旗 スイス

雄大なアルプスと氷河を展望台から
後退が激しいヨーロッパですがユングフラウヨッホやゴルナーグラート等の主な展望台からは今も雄大な氷河が望めます。展望台への山岳交通は年中運行。

アメリカ国旗 アラスカ

海上から見るダイナミックな崩落!
アラスカの氷河は多くが海に流れ込むタイプのため観光はクルーズが主体で、アンカレッジから日帰りツアーが多数あります。魅力は非常に美しいグレイシャーブルーの色合いと、ダイナミックな崩落の瞬間に出会えること。クルーズは概ね5-9月で、一部10月と2-3月のプランもあります

アイスランド国旗 アイスランド

氷河湖やアイスケイブが大人気
国(島)の11%が氷河で覆われているアイスランド。その下には火山が隠されているのが特徴で、氷河はしばしば火山灰をまとっています。簡単な氷河ウォークやスノーモービルツアーは年中運行していますが、ヨーロッパ最大の氷河の袂にあり幻想的な美しさで名高い氷河湖のクルーズ観光は4-10月。

ノルウェー国旗 ノルウェー

スピッツベルゲン島にも注目
本土では大陸ヨーロッパ最大のヨステダール氷河周辺の氷河ハイキングが主な観光スタイルですが、後退が激しく、また主要観光ルートから外れるため日本からはやや行きにくいのが難点。また、ノルウェー領スピッツベルゲンでは日帰りのクルーズツアーがあり美しいグレイシャーブルーの氷河に近づけます(3-10月)。

グリーンランド旗 グリーンランド

氷の聖地グリーンランド!
世界最大の島グリーンランド。その80%がアイスシートと呼ばれる氷河に覆われています。アイスシートはカンゲルルススアークから年中ツアーで見られます。またイルリサットでは動きの早い氷河(アイスストリーム)が大量に崩落し、氷山が湾に流れ出しています。その様子は年中見られますが、2-3月は湾そのものが凍結しクルーズツアーができない場合があります。さらにイルリサットから夏季のみクルーズで行くエキップ氷河では美しいグレイシャーブルーとダイナミックな崩落が見られます。